鞘滑り(出世)取りの方法

2000/6/6

鞘滑り取りのすばらしさについて書こうと思ったのですが、 いまさらそんな事を書いても仕方が無いので、僕のやり方について書くだけにします。

世の中に様々なやり方があるうちのあくまで一例ですので、 こんな方法もあるんだな、くらいに思ってもらえれば良いと思います。



コンセプト

不利な建玉をしてしまわないように、いくつかの制約を設けつつ、 その枠内においては比較的個人の相場観を活かせる売買法とする。
完全に全てをシステム化するのも可能ではあるが、 ある程度個人の裁量が入った方が売買の面白さという点では良い。
あと、細かい事を規定してもあまり意味が無いというのも理由である。 例えば「過去2年間の平均値より下では売らない」なんて規定を定めても良いけど、 「上値余地がかなりあると思ったら売らない」でも実際は充分なのである。



銘柄

日持ちのしない商品は避ける。
→ まず鶏卵とブロイラーは除外される。

鞘が半年あたり10%程度以上ある。
→ 2000年6月10日現在これに合致するのは、 白金、ガソリン、灯油、アラビカ、ロブスタ、小豆、ゴム、の7銘柄。

順鞘の場合は上値余地が、逆鞘の場合は下値余地が、かなりあると思われる銘柄は避ける。
これは過去1〜2年の値動きを見て判断する。
→ 現在、ここまでで合致するのは灯油のみ。



建玉

状況に応じて二分割か三分割の仕掛けを基本とする。分割は等分割。
トレンドの転換点での仕掛けを目指すが、転換してからでは遅い。 よって早めに仕掛ける事になるが、当然ながら天底をピッタリ取るなんて出来ない。 売ったのに上がった(買ったのに下がった)場合は、その玉はそのままにしておいて、 またトレンドの転換点を狙って次の分割分を売る(買う)。 そのとき、一回目より低い所で売ってはならないし、高い所で買ってはならない。 つまり、乗せはやらないという事。分割した分を全部仕掛けられなくても問題ない。

玉の乗り換えによる建玉については、違ったルールが適用される。→乗り換えの項を参照。



手仕舞い

玉を手仕舞う要件は次の三つだけである。

1.玉が期近にまわって来た。
2.鞘が無くなった。
3.全資金量に対する建玉全部のリスクが大きくなった。

まず1について。これの意味するところは、 基本的に期近になるまで玉は維持する、ということである。 どんなに利が乗っていようが、値洗いがマイナスになっていようが、 期近に来るまでは仕切らない。ここを曖昧にしてしまうと、 思惑売買との線引きが出来なくなってしまう。

次に2。鞘を利用した売買なので、 それが無くなってしまったら玉を建てている意味が無い。 鞘が縮小した場合についても玉を減らす。 ただし、一度鞘が無くなっても再度発生する場合もあるので、 ある程度、時間的な余裕を持って見る。 値洗いの損益はここでも関係無い。

3については、リスク管理の項を参照。



乗り換え

期近にまわってきた玉は、基本的には期先へ乗り換える。 ただし、仕切ってから建てるまでに時間差があっても良い。 流れが見えない場合は、素直に、期近を仕切ると同時に期先を仕掛ける。 下げ過程で売り玉を徐々に減らし、その後の上げ過程でまた玉を増やしていく、 とかでも良い(これも時間差乗り換えの一形態)。



リスク管理

ストップロスは設定しない。なぜなら、いくら値洗いがマイナスになっても、 鞘が有利な状態なら依然としてその玉にはメリットがあるからである。
リスクは建玉全体で考える。
建玉全部に対するボラティリティーからリスクを計算するのが筋だが、 大まかに考えてもそんなに違わない。 単一銘柄だけなら丸代金合計の40%、 複数銘柄なら丸代金合計の30%くらいの資金を常に用意すべし。 これは実動証拠金率にするとかなり低い。 分割した分を全部仕掛けられなかったりした場合は、 資金のほとんどが遊んでいる状態だったりする。 だからといって、流用してはいけない。
資金が減ってきたりして、リスクが増えてきたなと思ったら玉を減らす。 そのときは鞘の状態、玉のバランスを考えて切る玉を決める。 値洗いの状態は判断材料にはしない。惑わされぬよう。



資金計算

鞘滑り(出世)による損益と、相場の変動による損益は分けて考え、 相場の変動の分はプラスが出ても総資金には算入しない。 総資金は値洗いの分も含めて考える。
相場の変動による損益は二番限で計算する。
例えば、ゴムを90円で売り、現在77円だとする。 その間、二番限が80円から70円になったとすると(限月は変わってる事に注意)
鞘滑りによる損益=実損益−相場変動による損益={(90−77)−(80−70)}×5000=15000
で、一万五千円と計算される。



その他

相場の動きが幾何ブラウン運動に従うとの仮定によれば、 下げたところで売り玉を増やした方が有利であるが、 下げるほど下値余地が限られてくる、との立場に立てば、 下げたところで売り玉を増やすのは少しマズい。 よって、基本的に下げたところで玉は(急には)増やさないとの立場をとる。

玉締めによる逆鞘は、順鞘に比べて不安定であると思われる。 よって、逆鞘の買いは、順鞘の売り、の二倍程度のリスクを見込む。




目次へ