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先物取引とは何か

先渡し取引

先物取引の原型は先渡し取引であると言われています。 そこで、まず先渡し取引について説明します。

先渡し取引とは、あらかじめ値段と数量を決めて、相対で、 将来の決められた期日に売買を行うことを約束する取引の事を言います。 契約日には値段と数量と受け渡し日についての契約だけが結ばれ、 実際のお金と品物の交換は将来、受け渡し日が到来した時に同時に行われます。

先渡し取引の良い点は、受け渡し日が将来でも値段が既に決まっていますので、 将来の価格変動の影響を受けないという事です。 これにより、売る方も買う方も将来の事業計画を立て易くなります。 しかし先渡し取引は相対取引ですので、不便な点も多くあります。 そこで、先渡し取引の何が問題で、先物取引だとどう解決されるのかという点について説明します。
3人だけの市場

単純化して、Aさん、Bさん、Cさん、の3人だけからなる市場を考えます。 まず、7月10日にAさんとBさんの間に「12月25日にAさんは金1KgをBさんに300万円で売却する」 という契約が結ばれたとします。AさんはBさんに売却するための金1Kgを入手するため、 9月20日にCさんとの間に「12月25日にCさんは金1KgをAさんに250万円で売却する」 という契約を結びました。この二つの契約はいずれも12月25日を受け渡し日とする先渡し取引です。



この場合、もし契約が正常に履行されるなら、 Aさんの利益50万円は12月25日を待たずに確定したことになります。 しかしその50万円は、12月25日にCさんから現物を購入しそれをBさんに売却するまで手に入りません。 しかも一時的に250万円の資金を用意しなければなりません。 Aさんにすれば、現物の受け渡しはBさんとCさんの間でやってもらって、 自分はさっさと50万円を手にしたい所ですが、そうも行きません。 それどころか、もしBさんかCさんが倒産したり逃げたりすれば多大な損害を被ることになります。

そのような不便さを取り除くため、中立な立場の取引所を設立し、 取引全てを仲介するようなシステムが考えられました。 契約不履行のリスクも取引所が負うことにすれば、取引も安心して行えるようになります。



この場合、Aさんは契約不履行のリスクから解放されるだけでなく、 取引所との間に同じ受け渡し日の同じ品物の売りと買いがありますので、 受け渡し日を待たずに50万円の利益が確定し、取引から離脱する事が可能になります。 このような仕組みが先物取引です。



先物取引においては、買い契約と売り契約は必ず対になって発生しますが、 間に仲介として取引所が入っていますので、相手方が誰か知る必要はありません。 更に、上記のAさんのように、反対方向の契約を結ぶ事によって契約を相殺し、 利益や損失を確定して取引から離脱する事が可能になります。
本質は契約

先物取引において、売り契約を結ぶことを単に「売る」、買い契約を結ぶことを「買う」、 契約のことを「玉(ぎょく)」、売り契約のことを「売り」もしくは「売り玉」、 買い契約のことを「買い」もしくは「買い玉」、と呼びます。 また、新たに契約を結ぶことを「新規」、既に存在する契約を相殺する目的で契約を結ぶことを「仕切り」、 と言います。

ゴム売り、とか、銀買い、とか言いますが、実際には品物を売ったり買ったりしているのではなく、 本質は、将来の決められた期日に売ったり買ったりする契約である、というのを理解しておいて下さい。

先物について説明する時に「買う権利を売買するんです」というようなフレーズを使う人がいますが、 これは正しくありません。権利だけなら放棄することもできますが、 先物の場合は本質的に契約ですので放棄は許されません。 正確には「買う、権利および義務、を売買する」と言うべきでしょう。
用語

売りに対して買い、買いに対して売り、を反対売買と言います。 また、売り玉を仕切ることを買い戻し、買い玉を仕切ることを転売と言います。

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