秋山昇 さんの日記

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10万年  2011/05/22(日) 17:58:34
 「100000年後の安全」を観てきた。途中、少し寝てしまったが。放射性廃棄物の地層処分について、危険なものが埋まっている事実をどう何万年後かの人類に伝えるか、というのが主題。何万年後の人類に今の言語が理解できる可能性は低いし、記録の断絶が起きれば、人類がピラミッドを発掘したように放射性廃棄物を発掘してしまうかもしれない。
ただ、ここで議論されていることは少しズレていると思う。確かに人間は、何かが埋まっていると気が付けば好奇心にかられて掘り出してしまうかもしれない。その結果いくらかの死人は出るだろう。しかしその場合は毒物が埋まっているということですぐに埋め戻され、大規模な拡散は無いと考えられる。
それよりも、そもそも地層処分自体が10万年の年月に耐え得るのか、という点が重要であると思う。ガラス固化体、金属容器、粘土等の人工バリアと地層そのものによる天然バリアで守るというが、人工バリアはせいぜいもって数百年であり、その後は地層自体で10万年の防御が必要になる。固い岩盤でも実際は亀裂だらけであり、中を地下水が移動している。水を吸ったスポンジみたいなものである。砂漠の中にある米国ネバダのユッカマウンテン処分場でも、地下水に乗って放射性物質が予想以上に速く移動していることが判明し、反対運動が起きている。ちなみに水に溶け難いプルトニウムもコロイド化して水と一緒に移動する。
核燃料サイクル開発機構は、深度が高いほど地下水の移動速度は小さくなると言っているが、根拠が無いし、当の核燃機構自体が2000年レポートで、必ずしも深くなるほど地下水の流れが遅くなるとは限らないとの結果を出している。東濃地域での実測値は1年間あたり0.05~50mほど動くとなっている。10万年だと5km~5000kmになる。水平方向に比べて垂直方向に動き難いことを考慮したとしても、現在計画されている深さ数百mではどう考えても不足である。数百年後から数千年後には地下水に大量に染み出してくることになる。日本には数万年単位で安定した地層は存在せず、内部は亀裂だらけで水がたっぷり含まれているので、10万年もつ地層処分は不可能である。
映画に出てくるオルキルオトの処分場にしても、地下水は豊富に存在する。18億年前から動いていない地層ということなので亀裂は少ないと思われ、日本よりは地下水の移動速度も遅いとは思うが、実際どうなるかは10万年経ってみないとわからない部分もある。感覚的には、計画されている深度400~700mというのは浅いのではないかと感じる。10万年で割って1年あたりにすると1年あたり4~7mmということになる。地質評価の結果を探したけどネットでは読めないようなので、これが妥当なのかどうかはわからないが。

最近  2011/05/18(水) 10:49:26
 仕事と子供と家の整備と庭仕事で過ぎていく毎日。あまり相場やる気が無くなってくるなぁ。
職場は非常に良い環境だが、忙しいのに変わりはない。給料は上がったのだが、なぜか手取りは変わらず。調べてみると、住居手当や通勤手当やその他の手当が無くなったのが効いている。しかしその分、住宅ローン控除で戻ってくる筈だ。
子供は苺と納豆と蜜柑が好物のようだ。軽い卵アレルギーの可能性があり様子見中。顔つきが週単位で変わっていく。木琴を弾いたりと、進歩が著しい。
家の整備は一通りは終わったが、二階の部屋がまだ片付いてない。床下のチェックもしなくては。業者には一度見てもらったのだが、自分の目でも見ておきたいからね。
庭は、雑草を抜いて枯れ草を処分し、色々と植えて、ようやく整ってきた。買ったときから植わってる低木で、白い小さな花をつける木があるんだが、色々と調べても名前がわからない。引き続き調査中。

  2011/05/16(月) 22:07:33
 野菜については放射性物質の降下量のデータから避けるべき地方がわかるが、魚が問題だよなぁ。海水の動きは、拡散が時間の平方根に比例するのに対して移流は時間に比例するから、汚染物質は拡散するより海流に乗って動く方がメインである。海流は海岸に沿うわけで、どのあたりまで来ているのか心配。石川や高知に遊びに行って、魚をたっぷり食べたい。

既にメルトダウンしているってのは多くの人が予想していたことだが、発表を詳しく見ると、海水注入がもう半日くらい遅れていたら水素爆発じゃなくて水蒸気爆発が起きて日本全土と朝鮮半島とロシアの一部が放射性物質まみれになるところだったようだ。政府が海水注入を要請したのに対して東電が渋ったという話もあるが、もう少し遅れていたらと思うと恐ろしい。首都移転も有り得たかもしれない。運が良かったというべきか。

人間は自分のしてしまった行動を正当化する方向にバイアスが働く。避難しなかった人は自分が住んでいる場所は安全であるという情報を信じたいし、避難した人は自分が住んでいた場所は危険であるという情報を信じたいものだ。それは人間である以上、仕方が無い部分もある。自分だって、庭で野菜を育てる以上、自分の住んでいる場所より放射性物質の降下量の多い地方の野菜は食べないが、より降下量の少ない地方の野菜は食べてもいいかなと思う。どこかで線引きせざるを得ないわけだが、東京に残って庭で野菜を育てているという個人的な事情が線引きに影響してしまう。できるだけ客観的に判断したいとは思うのだが、難しい。
相場も同じである(これが言いたかった)。

  2011/05/14(土) 23:51:12
 花壇を作って花やハーブや果物を植え、庭の端の方には木や野菜を植えた。土作りとか、めちゃくちゃ適当にやってしまった。石灰も入れ忘れたけど後から撒いておけばいいかな。本当は土を配合して一週間くらいは寝かせておくらしいのだが、面倒なのでそれもやらず。まぁ、全滅は無いだろうし、上手く行かなかったものについては研究して再チャレンジすることにしよう。
小さくても庭があるのはやっぱり良い。小さい庭でも草取りと枯れ草拾いに半日×2日かかった。草や枯れ草は普段なら肥料としてそのまま土に埋め込んでしまうところだが、放射性物質が気になるので全部処分することに。ガイガーカウンターが手に入るようになったら、庭中きっちり測定しなくては。

金は買ったまま。ゴムと油は、指値していたけど結局入らず。なんだか休止状態。

浜岡原発2  2011/05/10(火) 14:39:31
 一匹羊さんの言われるような、大人の事情による阿吽の呼吸で浜岡原発の停止が決まったというのは現実としてはそうで、解決法としてはわからなくもないんだけど、個人的にはやはり違和感は否めないなぁ。
地震国の日本でもプレート境界の上にあるのは浜岡原発くらいで、しかも地盤がそれほど堅くないとか、活断層が近くを何本も通っているということが後からわかってきて、国内外から浜岡を特に危険とする意見が多かったわけで、地震による揺れを理由に浜岡だけを止めて他の原発や水力ダムを止めないのがそれほど非合理的とは思わないけどね。アメリカから特に浜岡原発だけを止めるように要請があったという話もあるし。
今回の福島原発は津波は大きかったが地震による揺れ自体は大したことが無かったわけで、津波を理由にするなら、逆にそれこそ浜岡原発を特別視する理由が無くなり、日本中の原発について1000年に一回レベルの津波対策をしなくてはならないことになる。
要するに、ごく単純な論理すら破綻しているにも関わらず、それで国民が納得するだろうと考えている政府も舐めすぎだし、理屈が合ってないにも関わらず浜岡が止まったことで満足するような人(そんな人がもしいればだが)も馬鹿である。政府としては、理屈は明らかに間違っているけど、これでみんなそれなりに満足するんだから、大人の事情を汲んで細かいことは気にするな、という姿勢なのかもしれない。
しかしそれにしても物には限度というものがあるんじゃないかと思う。「AならばBである」と「BでなければAではない」が同値である、というのと同レベルのごく単純な論理すら破綻している方策がまかり通るようでは技術立国日本の将来が心配になる。というか、そんな国は嫌だな。理系人間は全滅してしまったのかねぇ。

原発については個人的には廃止論者だが(福島の事故の以前から日記にも何度か書いている)、基本的には日本は民主主義国家だから民意で決めればいいと思う。今回の地震の前までは、強力なプロパガンダによって原子力は安全で事故は絶対に起きないとされていたが、現時点では、人間の作ったものだから想定外の事態が起きれば事故は起きるという当たり前のことがようやく前提になった。その他、事故の程度によっては広大な土地が失われる可能性があるし、電力会社にはトラブルを隠蔽する方向にインセンティブが働く、等の情報を前提として、それでもメリットの方が大きいと民意が判断すれば原発を推進すればいいだろう。まぁ、その可能性は低いと見ているが。
チェルノブイリでは政治体制の問題もあり健康被害の詳しいデータが得られなかったが、福島原発の事故では今後10年くらいでかなり詳細なデータが取れると思うので、それも原発を推進するかどうかの判断材料になるだろう。なんせ、未だに広島長崎のデータしかまともなデータが無いので。

浜岡原発  2011/05/10(火) 01:28:35
 浜岡原発が危険なのは、地盤が軟弱で直下型地震が起きると想定以上の揺れが発生する可能性が高いからであって、津波に弱いからではない。それなのに、防波壁が出来るまで停止するというのはポイントがずれている。止めるなら廃炉にすべきであって、防波壁が完成してから再開しても危険性は大して変わらない。
揺れを理由に廃炉を命じると反発が大きいから、津波対策を理由にしてひとまず数年間止めさせようという作戦なのかもしれないが、筋が通らなさ過ぎる。浜岡原発の停止自体は賛成だが、そこへの持って行き方がおかしい。いつからこの国は、目的を達成するためなら理由は何でも良いことになったのか。こんなのが通るなら、政府は何だって理由をつけて強行できてしまう。恐ろし過ぎるな。

買い  2011/05/06(金) 17:45:39
 金、10枚まで買い直した。
基本的に全て買いで見ているので、石油やゴムもこれ以上下がれば長期目的で少し買いたいところ。

価値の基準  2011/05/04(水) 11:44:33
 宝くじの話は色々と考えてみるとなかなか面白い。
合理的か非合理的かを考えたとき、相場を張る人は、これはもう職業病みたいなもので、自然と金銭的価値を基準に考えてしまう。金銭的価値を基準に考えると、金銭の出入りが無い場合はゼロサムだから、宝くじを売る方が利益を得ていれば、必然的に、買う方は損をしているという結論になる。
しかし、(抽象的だが)幸福度なるものを基準にした場合は、金銭的な出入りが無くても幸福度がゼロサムになるとは限らない。例えば、全財産が1000万円の二人の一般的な給与所得者について、強制的に、一方の財産を2000万円にしてもう一方を無一文にすると、強制した後の方が前よりもトータルの幸福度は少なくなると考えられる。
合理的というのは、理屈に合っているという意味で、理屈の基準の種類は問わないから、金銭的基準から見て非合理的なものが幸福度的基準から見て合理的になることも、またその逆も有り得る。
ただ、幸福度を基準にした場合に難しいのは、個人差が大きいことと、状況に依存する面が大きいことである。例えば、一般的な給与所得者から全財産が2000万円の人と無一文の人を選び、強制的に一人1000万円に平均化した場合、上の例の逆なのでトータルの幸福度が増大するかといえば、一概にはそうは言えない。
幸福度を基準にすると、そういう複雑なことが色々と出てくるので、割り切って全てを金銭的基準で判断する、という態度を取ることにも一定の合理性はある。しかしそれは簡略化した近似手法に過ぎないわけだから、100%の合理性があるとまでは主張できないだろう。
このあたりはプロスペクト理論の領域で、累進課税などの課税制度の最適化などとも関係していて興味深いと思う。課税制度の最適化にしても、その基準はトータル幸福度の最大化とか経済成長の最大化とか色々あるが、経済成長にしても最終的な目的は幸福度の増大にあるわけで、最終的にはどの時間軸(正確には時間軸に沿った積分)で幸福度を考えていくか、という点に収束することになると思う。

リスク  2011/05/04(水) 07:52:41
 金は、もう1枚仕切りの指値をしていたが、10円届かずに下げてしまった。しかし将来を考えると、もはや買いポジションを持ってないことがリスクになりつつあるように思う。あまり安易に利食いするのも考えものかもしれない。
今後、当分は商品はトレンドフォローで取り放題のような気がする。早いとこシステム運用を開始しないとなぁ。

東京での生活はかなり落ち着いてきた。家の中は2階がまだ片付いてない。連休の間に庭に色々植えたい。

日本の状況を見ていると、今後就職する人にとっては将来の選択肢を日本に限定する事自体が大きなリスクになりつつあるように思う。昔は公務員や銀行員はリスクが少ないと言われていたものだが、世界に向けてつぶしが利かないことは不利になると思う。もっとも、公務員でも銀行員でも、ジェネラリストではなく何か世界に通用するスペシャリストとしての技能があれば別だが。

冬木実さんが宝くじについて書いているが、お金の実際価値は額面価値と完全には連動しないので、単純に期待値では割り切れないところがある。だからこそ保険とか宝くじが商売として成立するのだが。
一般的な給与所得者を想定し、彼の全財産を1000万円と仮定する。10分の1の確率で1000万を失うが10分の9の確率で200万円を得られる賭けがあったとしても、彼はこの賭けには乗らないだろう。期待値はプラスだが、彼にとって全財産である1000万円を失うことの実際価値の減少幅は200万を得られる実際価値のプラス幅の10倍以上だからである。しかし10億円持っている人にとっては、マイナス1000万円の損失幅はプラス200万円のプラス幅の約5倍なので賭けに乗ると思う。
20万分の1の確率で10億円当たるくじを1万円出して買うかといえば、その人にとって10億円でどうしても叶えたい夢があり、10億円に1万円の20万倍以上の実際価値があるならば買うだろう。しかし、100億円持っている人にとっては10億円の実際価値は1万円の実際価値の約10万倍にしか過ぎないので、このくじを買うことはない。
収入や財産の規模に比べて小さい金額になればなるほど実際価値と現実価値の乖離は小さくなるので、宝くじを買う人が、4分の1の確率で3万円得られて4分の3の確率で1万円損する賭けをしないとしても、特に行動に矛盾があるとは言えない。
個人的には、実際価値を吟味して、宝くじは買わないし、生命保険や疾病保険にも入らないが、自動車保険には入っている。まぁ、団信は入らないといけないので入っているが。

発電方法の評価  2011/05/02(月) 10:24:41
 発電方法のポテンシャルについて数値的なことをいくつか調べてみたので、備忘録として書いておく。

福島原発の事故により日本において原子力発電所の新規建設は絶望的になったと思われるが、この分をどう代替していくかが問題となる。目先の話(今年の夏)に関しては特に問題は出ないだろう。3月25日の東電の発表によると7月には最大電力供給力は4650万kWまで回復できるとしており、一方で東電管内の最大電力需要は5500万kWと予測している。東電は揚水発電設備を1050万kW分保持しており、さらに北海道電力と中部電力からの電力融通が100万kWほど期待できるので、ギリギリ足りると思われる。

現在稼働している原発をすぐに止めるのは現実的ではない。30年程度かけて、既存の原発を廃炉にしながら徐々に入れ替えて行くのが妥当だろう。100年後くらいには、世界中の砂漠に太陽光パネルを設置して超電導送電で世界中に送電するようなシステムが出来ると思うが、今後30年では難しい。日本は今後少子化が進み、電力需要も伸びないと思われるので、原子力の5000万kW分を代替することを考えればよい。
現実的な可能性としては、LNG火力、地熱、太陽光、風力ということになるだろう。太陽光や風力について、出力調整ができず不安定で、かつ、出力が直流だったり、交流でも周波数が一定せず、送電ラインに乗せるには質が悪い、等の意見が見られるが、これらは単なる技術的な問題であり解決可能である。出力の不安定さ(曇ったり風が止まったりすると急に出力が落ちる)については、火力発電(特にガスタービン発電)の出力調整で臨機応変に対応できる。現実にも、今まで地震などで原発が緊急停止したときには瞬間的に火力が出力を上げてショックを吸収している。数時間単位の緩やかな変動や昼夜の変動については揚水発電所の増設で対応すればよい。揚水発電の効率は70%程度なので、夜間の余剰電力の70%を昼間のピーク時に使うことができる(現状では深夜に火力発電の出力を3分の一に落として運転している)。太陽光や風力の電気としての質の悪さについては、インバータ等の強電技術は日本の得意とするところで、本質的な問題にはならない。

LNG火力は埋蔵量や安定供給の点からも有望である。最近喧伝されていた原子力の利点は二酸化炭素を出さないことだが、LNG火力の発電量あたりの二酸化炭素排出量は石炭火力の半分、石油火力の3分の2程度である。分単位の出力調整が可能なので太陽光や風力による出力変動に機敏に対応できる。技術的にも特に困難は無い。技術的には5000万kWを全部代替することも可能だが、石炭火力や石油火力に比べて少ないとはいえ二酸化炭素を出すので、全部は難しいかもしれない。

地熱について。産総研の推計では日本における現実的なポテンシャルは2000万kW程度、そのうち80%が国立公園等にあり現状では開発が不可能、開発可能な20%の400万kWのうち開発されたのが53万kWという報告がある。温泉地と競合するなど、現実的に建設不可能な場所も多いだろうけど、開発規制の撤廃で1000万kW程度は確保できると思う。技術的な問題は無い。発電コストは1kWhあたり10円を切って、火力と競合できるレベルまで来ている。高温岩体発電が実用化されれば日本の総需要を単独で賄えるらしいが、商業化にはあと10年から20年程度はかかりそう。オーストラリアで27.5万kWの実験発電所が建設中らしい。

太陽光発電について。コストは高いが低下傾向にある。現在で火力の2倍~4倍程度(日照など条件によって違う)だが、世界中で生産の拡大と技術革新が続いており、2020年頃には火力を下回ると言われている。発電密度の低さがネックとなるので設置面積が議論に上がることが多い。出力は1m^2あたり晴天時で100W程度なので、100万kWだと10km^2の面積が必要。夜間も全部均して考えて設備利用率を10%とすると100万kWあたり100km^2となる。付属設備等を含めると200km^2程度は必要かもしれない。山手線の内側が63km^2なので莫大な面積が必要なように思えるが、田舎に行けば10km四方で100km^2になるから大した面積ではない。日本の耕作放棄地が2005年の時点で3860km^2もあるし、住宅用の太陽光発電システムが3kW(設備利用率10%で0.3kW)程度なので330万世帯が取り付ければ100万kW程度になる(日本の世帯数は5000万世帯くらい、一戸建ての数は2650万戸くらい)。福島原発から半径20kmの面積が627km^2なので、政府が全部買い上げて4分の一程度の土地に設置すれば100万kW程度は何とかなるかもしれない。30年先まで考えれば、200万kW程度は確保できるのではないかと思う。200万kWと聞くと大したことがないように感じられるが、設備利用率10%で200万kWだと晴天時の出力は2000万kWとなる。電力のピークは必然的に昼間のカンカン照りの時間帯になるから、そのピーク時に2000万kWをカバーできるなら恩恵は非常に大きい。

風力発電について。コスト的には10年以内に火力を下回ると予想されている。太陽光と同様、発電密度の低さが問題だが、太陽光よりは密度は高い。既存のウィンドファームの実績から計算すると、1ha(0.01km^2)あたり1000kW程度の密度では建設できるようだ。100万kWだと10km^2、設備利用率を20%とすると平均100万kWの電力を得るのに50km^2必要になる。現時点で設備容量として合計200万kWを超える発電所が稼動している。利用率20%とすると40万kWとなる。経産省の2010年の新エネルギー部会では発電量で300万kWを導入目標としている。世界では2010年時点で合計1億9400万kWの設備容量があり、利用率20%としても4000万kW程度の発電が行われている。各種報告を見ても、日本において今後30年で発電量で1000万kWを達成するのはそれほど困難ではないと思われる。必要面積は500km^2となる。問題は騒音と低周波である。低周波による健康被害はかなり深刻のようだ。福島は風力発電の好適地なので、福島原発周辺の土地を政府が買い上げて密集して建てるのが良いと思う。後は海上が有望だが、台風に備えるとコストが上がる。

単に原子力の5000万kW分を代替するというだけならば全部火力で置き換えればよいが、そうすると燃料価格上昇の影響を受け易くなるし、二酸化炭素の排出を減らすという国際公約の実行が不可能になる。現実的な解決法としては、30年後に向けて、LNG火力で2000万kW、地熱で1000万kW、風力発電で1000万kW、後は電力ピークを太陽光発電で埋める、という感じにしていくしかない。上での検討結果から考えても、これには相当の困難が予想される。ただ、30年あればかなりの技術革新が期待できるので、意外と簡単にクリアできるかもしれないが。技術革新を促すためには発送電分離は絶対に欠かせないだろう。

ただ、もしかしたら30年後には、福島原発事故の記憶も薄れて原子力発電の新規建設が可能になるかもしれない。老朽化した原発を安全な最新式のものに建て替えますと言えば、理解が得られる可能性も無くはないような気もする。

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