季節 さんの日記

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(無題)  2009/01/30(金) 23:05:46
  国債の増発は後世の負担になるという話がある。しかし果たして国債は後の世代に負担をかけることなのだろうか?此についてはいろいろ説があるようであり、自分もつらつら考えてみるに、たぶん国債は負担になるとしたらその世代であって、後の時代に負担が転移するのではないというのが正しいと思う。なぜなら国債を発行し市中消化すれば、それはその時点で民から官への資源吸い上げとなり、実質的に増税と同じである。もちろん後で国債の利払い・償還のために真の増税をしなければならないが、国債を持っているひとは配当と償還をうけるから、国債を持っていない人から持っている人に富を移転させるだけで、国民全体ではプラマイゼロである。よって後世に負担が移転しているわけではない。
 ここで国債が遊休資源の吸い上げに使われ、その国債が日銀引き受けならどうなるか。遊休資源であるから国民経済の負担は実質的に増えない。後の時代には日銀に配当償還しなければならないが、日銀は余剰金を国庫納付しなければならないので、相互に打ち消し合う。よって後世経済にも全く中立となる。
 冷静に考えてみるとこれは当然のことである。たとえば戦争経済は究極の財政拡張であり、莫大な国債が糸目をつけず発行されたが、その結果厚生が下がるのは国家に資源を吸い上げられたその世代であって、平和の時代に負担が転移したわけではない。もっとも国債自体はインフレで紙くずになったが。

(無題)  2009/01/25(日) 20:10:56
  マンデルフレミング理論(以下MF)は、ノーベル経済学賞に輝いた学説ではあるが、調べれば調べるほど、一有権者としては疑問を感じる学説である。最近はあのクルーグマンですら財政政策を口走っている。ということは、主流派経済学者のクルーグマンですら、MFを本気で信じてはいなかったと言うことである。高橋洋一氏はアメリカ留学の時クルーグマンとインフレターゲット政策について意気投合し、日本の政界官界は世界標準の経済学が理解できないと嘆いたが、今やはしごをはずされた気分だろう。
 そもそもMFでは、財政政策は金利上昇をもたらすといっているが、この辺からして私らも昔ちょっと教わったケインズ政策の想定とは違うように思える。古典的ケインズ理論によれば、失業や過剰設備があるとき財政出動するのであり、その源資は税ではなく国債であるべきである。国債であっても其れを市中消化させれば増税と同じ事であるから、むろん買いオペ併用、すなわち輪転機を回す政策であるべきであり、そのときも過剰設備がある限りにおいてインフレは起きず金利も上昇しないというのがその趣旨である。以上の想定において固定相場制か変動相場制かは関係ないはずである。
 高橋氏は90年代に財政政策が効果をもたらさなかったのはMFが正しい証拠であると言うが、金利は一貫して下がっているし、円相場にしても95年にピークを打って以後円安傾向であるから、なんらMFを立証するものではないと思う。金利と円相場の関係も実際の所単純ではない。それどころか財政赤字は通貨安をもたらすというMFとはさかさまの経験的事実さえあり(たぶん財政政策は財政規律の弛緩→インフレ予想という連想が働くのだろう)MFで通貨投機をすると失敗しそうである。
 まあもっともケインズ理論において過剰設備がある限りにおいて全然金利に影響がないのかというと、そうではないと思うが、其れは別の機会に論じたい。

(無題)  2009/01/25(日) 11:37:12
  漢字検定を主催している日本漢字能力検定協会が、儲けすぎにより文部科学省から指導を受けた。たしかに資格・検定業界は、官の認定を受けて定着すればおいしい事この上ない。だいたい、こんなにも各種資格や検定が多いのは、世界でも日本が一番ではないか。そのいっぽうで、大学院学位(ことに文系のそれ)が信用されていないのが、日本の特徴である。事務系ホワイトカラーが箔をつけようと思うなら、修士号(いわゆる専門職学位を含む)を取得するのではなく、税理士試験の簿財とか、中小企業診断士、社会保険労務士をめざすほうが一般的だし、信用もされる。比較の難しい学位を取得するより、資格試験のような「客観性」にとんだテストをクリアする方が、日本人の科挙的価値観にマッチするのであろう。
 大学の序列にしてからが、入試難易度が唯一の尺度であり、大学の中身など大して関心がないのは周知の事実である。大学院学位がいまいち信用されないのは、たぶん大学院入試が学部入試にくらべ客観性がないためだろう。私立大学ではAO入試や推薦入試があまりにも多くなると文科省の指導が入るが、そもそも外国では大学入試はすべてAO入試や推薦入試である(笑)したがってこんな事を指導するのは全くおかしいのであるが、一般人の間で疑問の声は出ない。要するに推薦入試ごときは信用すべき序列を破壊する行為であると日本人は思っているのだろう。
 イギリス人は日本の大学入試を「壮大なクイズ選手権」と評したが、クイズ的、科挙的価値観はことほどさように日本の全社会を覆っている。このような社会では、おつむのよさ=テストに合格することになってしまうが、所詮地頭を測定する問題を作るのは難しく、多くは「知識の量」で合否が決まるのが現実である。まして競争試験であるから、主たる競争はテスト前数ヶ月にいかに知識を一時的にため込むかで決まってしまうことが多い。合格してしまえば不要な知識はたちまちのうちに抜け落ちてしまう。考えてみれば実に無駄なことであるが、日本国は全社会をあげてこのような価値観に疑問を持たない。アインシュタインは「本を読めばわかることは、本を読めばよい」といったが、日本社会ではアインシュタインは知的エリートにはなれなかっただろう。
 問題なのは、今や日本は全世界と競争している点である。日本のこの価値観が、世界的に見て有利なのか不利なのかはわからぬが、少数派であろう事は確かである。中韓はやや日本に近いが、一方で学位を重んじる社会でもあり、西洋的価値観もかなり受け入れているようである。議院内閣制・二院制は日本の弱点だと思うが、これに加え科挙的価値観もまた弱点となるならば、日本人に染みついているだけに、この克服は容易ではないと思われる。

(無題)  2009/01/22(木) 20:39:01
  United States of Americaをアメリカ合衆国と訳す。よく考えてみると不思議である。幕末の頃の誤訳から始まったという話である。だから本多勝一氏のように、合衆国という訳を嫌って、「合州国」という言葉を使う人もいる。しかし「長い物に巻かれる」のを潔しとせずわりと何でも筋を通すホンカツにしては、いささか不徹底な態度だと思う。なぜなら何故に「合州国」という特別な言葉を当てはめないといけないのか、筋が通らないからである。正しき訳は「アメリカ連邦(略して米連)」である。由来、FederationもUnionもCommonwealthも、等しく連邦と訳すのが外務省も採用している日本語の流儀なのであるから、United Statesも特別視せずに連邦と訳すのがあるべき姿である。ネット上では暴走族を「珍走団」と呼ぼうという運動があるそうであるが、そのうち藤原正彦さんあたりが音頭をとって、「『合衆国』をやめて『米連(べいれん)』と呼ぼう」という運動でも始まらないかしら。

(無題)  2009/01/21(水) 21:09:01
  1ポンドが125円と変動相場制後最安値を更新した。一昨年には251円だったから実に半値となったわけである。ちなみにブレトンウッズ体制ができた頃は1ポンド1400円を超えていたから、10分の1以下になった計算である。しかし1ポンド250円の頃はイギリスの物価は日本円に直すとだいぶ高かったようであるから、案外今の水準は妥当なのかもしれない。

(無題)  2009/01/20(火) 22:35:06
  近頃売り出し中の高橋洋一氏が、「マンデル=フレミング理論」があるから、現代の日本では財政政策は効かないという。この理論によれば、有休資源がある自由貿易体制のもとで、固定相場制では財政政策は効果があるが、変動相場制の下では財政政策は効果が無く、金融政策のみが効果を持つというのである。しかし考えてみれば、実物経済的には全く同じ状況でありながら、実物的政策たる財政政策が、単に固定相場制か変動相場制かで景気浮揚の効果があったりなかったりするとは、素人考えでは誠に不思議な話である。
 マンデルフレミング理論によると、変動相場制の下で財政政策を行うと、金利の上昇→通貨の上昇→輸出減で、効果が相殺されてしまうと言うのである。しかしふつう有休資源がある状態では財政政策は直ちに金利の上昇をもたらさないと考えられるのではないか? あるいは通貨の上昇は輸出減をもたらすけれども、やがて国内物価水準の下落により、より廉価での輸出が可能となり、輸出は回復するのではないか?
 どうも私には通貨が変動相場か固定相場かというのは、所詮「通貨単位の問題」にすぎず、巨視的には経済に対し中立的なんじゃないかと思ってしまうが、ケインズ理論もマンデルフレミング理論も短期の理論だから、その影響を無視することはできないというわけだろうか?ちなみにアメリカンケインジアン(一昔前の新古典派総合という系統である)の間ではマンデルフレミング理論は主流の理論だそうであるが、オバマ大統領は事実上財政政策を打ち出しているのだから、政策的にはオールドケインジアン的である。今や日本でも、意外な人が財政政策を唱えている。野口悠紀雄氏もその一人である。
 私の意見を述べさせてもらうと、たとえ変動相場制だろうと、オールドケインジアンあるいは小野善康氏に従って、財政政策は有効だと思う。財政政策に批判される部分があるとするなら、それが景気に効かないからではなく、投資主体が公共セクターになるため、無駄が多い、あるいは腐敗の原因となりがちという点にあるのである。

(無題)  2009/01/19(月) 21:02:51
 アメリカの時代、終わりの始まりという人が増えている。たしかに今後、世界のGDPにしめるアメリカの割合は少しづつ減って行くであろう。しかし其れが単純にアメリカの存在感の減退につながるかと言うと、私には必ずしもそうは思えない。なぜなら学術におけるアメリカの優位性は依然絶対的なものがあるからだ。世界の優れた研究者がアメリカに留学しているのは周知の事実である。学術における優位性が覆らない限り、巨視的にはアメリカの時代は続くと見る。

(無題)  2009/01/07(水) 22:49:24
  マザース上場のニューデールが時価総額不足で上場廃止の見込みという。ニューディールと言えば、元の社名をリキッドオーディオジャパンといい、確かマザース上場第一号のはずである。その後社長が逮捕される大きな不祥事があり、最近はすっかり事業内容も変わって、いわばゾンビ化していたわけであるが、最近は株価1円に張り付いていた模様である。マザースで上場を維持するためには、時価総額5億必要なのであるが、面白いことにこの会社は発行株数が5億3千万株もあり、それ故時価総額5億を下回ることはあり得ないのだ。まさかそれを考えてこんなに株式を発行したのだとしたら笑えるが、しかし東証も新たに、発行株式数の2倍以上の額がなければならないというルールを定めたため、このたび廃止基準に触れたわけであった。

(無題)  2009/01/05(月) 21:33:33
  相変わらず麻生首相の評判が悪い。ソフトブレインの宋文洲氏によれば、彼がマンガ好きなのは、たぶん文字が読めないからだろうという。しかしここまで不人気だと、却ってあえて人気取りをする必要もないのではなかろうか。私は、かねてから、地方の首長は3期までが望ましいと思っているが、その理由は、過度の長期政権は腐敗しがちであるということのほか、3期目には人気取りをする必要が無くなるので、有権者に不人気でも真に必要な事がやれると思うからである。その意味では、麻生首相が3年後の消費税増税を明言したことは、誠に正解である。この際徹底的に憎まれ役となって、やらなければならない不人気なことをやってのけるとよいかもしれない。きっと歴史が評価するであろう。

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(無題)  2008/12/30(火) 18:43:33
  昔西部邁は『発言者』という雑誌を出していたなと思っていたが、いつの間にか『表現者』と誌名が変わっている。久々に中身を読んだが内容は相変わらずである。そもそも『表現者』による人たちは、何かというとポピュリズムだの衆愚政治だの国民を小馬鹿にする割に、今更全く不可能な自給自足でもするつもりかというような、現実離れした突飛な議論を言い飛ばして悦に入るたぐいが多い。なんだかこの人たちより大衆の平均的意見の方が大方賢明なのではないかと感ずる点が多くてほほえましい。
 食料自給率にしてからが、農水省のデマゴギーと小学校以来の農本主義的社会科偏向教育による洗脳にもかかわらず、国民のかなり多くが腑に落ちないものを感じていたのではなかろうか。すべての産業が互いに連関しているのに、その一断面をとりだして数値を測定してみても、何の意味があろうかと疑問に思う人は多いであろう。にもかかわらずこのデマゴギーにものの見事にはまってしまったのが、常日頃大衆民主主義にシニカルな『発言者』の面々なのだから、たしかにユーモアがありすぎる。榊原英資も妙な人たちとつるんだものだ。

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